採用にかけた時間とコストを思うと、頭を抱えたくなる場面がある。
ようやく人手が足りて、これで一息つけると思った矢先、外国人スタッフから「辞めたい」と申し出がある。理由を聞いても「他にいい仕事が見つかったので」と当たり障りのない言葉が返ってくるだけで、本当のところは分からない。求人を出し直し、面接をし、また一から教える。この繰り返しに、正直うんざりしている現場は少なくないはずだ。
離職の理由を考えるとき、まず賃金の話になりやすい。もちろん賃金は大事な要素だが、それだけでは説明のつかないケースも多い。「もう少し給料を上げれば残ってくれるはず」と思って対策しても、離職が止まらないことがある。実は根っこにあるのは、日々の現場で「通じる・認められる・相談できる」が欠けているという、もっと地味な問題であることが多い。
なぜ外国人スタッフは辞めていくのか?
離職に至る道筋を分解すると、多くの場合ひとつの構造にたどり着く。それは、指示が伝わらないことから始まる悪循環だ。
口頭・一回きり・確認なしで指示が伝わらないと、本人は指示と違う作業をしてしまう。管理者はそれを見て「何度言えば分かるんだ」と注意する。本人からすれば、自分では理解したつもりだったのに怒られてしまい、何が悪かったのか腑に落ちないまま委縮していく。委縮すると、次に分からないことがあっても「また怒られるかもしれない」と聞き返せなくなる。聞き返さないから、また指示と違う作業が起きる。この繰り返しの先に「ここにいても、自分は認められないし、相談できる人もいない」という気持ちが積み重なり、離職に至る。
▲ 離職に至る悪循環。STEP3「委縮して相談できない」の手前で断ち切れるかどうかが、定着の分かれ目になる。
この悪循環は、本人の忍耐力や日本語力の問題として片付けられがちだが、実際には現場のコミュニケーションの仕組みの問題であることが多い。母国語が違う相手に、口頭・一回きり・確認なしで指示を通そうとすれば、日本人同士のチームでも似たようなことは起きる。誰が担当しても難しい構造なのだ(この構造については「外国人スタッフに指示が伝わらない現場の直し方」で詳しく扱っている)。
定着に効くのは「通じる・認められる・相談できる」
離職に至る悪循環の裏返しを考えると、定着している現場に共通する要素が見えてくる。それが次の3つだ。
指示や注意事項が、本人の母国語で正確に届き、理解できたかどうかが確認できる。
日々の作業や気づきが記録として拾われ、頑張りが「見えていない」状態にならない。
困りごとやトラブルを、遠慮せず伝えられる相手や仕組みが日常の中にある。
この3つは、それぞれ独立しているわけではない。指示が通じないところから委縮が始まり、委縮が続くと相談できなくなり、相談できないままだと日々の頑張りも拾われず「認められている」実感が持てない。逆に言えば、「通じる」を整えることが、「認められる」「相談できる」の土台にもなる。まず着手しやすいのはここだ。
放置するとどうなる? ─ 育成就労時代の転籍という論点
離職を放置するコストは、採用のやり直しだけにとどまらない。教育にかけた時間、現場の欠員による他のスタッフへの負荷、そして「また辞めるかもしれない」という現場全体の空気の疲弊にもつながる。
さらに、この論点は制度の変化によって重みを増していく。2027年4月に施行予定の育成就労制度では、技能実習にはなかった「本人の意向による転籍」が一定条件のもとで認められる見込みだ(要件の詳細は分野ごとに今後の省令で確定していく。最新情報は出入国在留管理庁の公表資料で確認してほしい)。詳しくは「育成就労制度とは?技能実習との違いと、受入後に効く現場の準備」で解説している。
つまりこれからは、「受け入れれば必ず残ってくれる」という前提が崩れる。せっかく育成した人材が、条件次第で他の受入先へ移っていく可能性が制度上ある。だからこそ、「通じる・認められる・相談できる」現場を作れているかどうかが、これまで以上に選ばれ続けるための経営課題になる。
現場でどう実現するか ─ KOETEという選択肢
とはいえ、「母国語で通じさせて、日々の声を拾い、相談を受け止める」を人力だけで回そうとすると、現実的な壁にぶつかる。管理者の多くはスタッフの母国語を話せないし書けない。毎回通訳を挟めばコストも時間もかかり、ちょっとした困りごとほど「わざわざ相談するほどでもないか」と流れてしまいやすい。
ここを埋めるのが、多国籍チームの報連相に特化したAI翻訳搭載チャットKOETEだ。仕組みはシンプルで、管理者は日本語で書くだけ、相手にはその人の母国語(13言語対応)で届く。原文(日本語)は常に併記され、やり取りはすべて記録として残る。
すみません、今日から少し腰が痛いです。重いものを運ぶ作業は大丈夫でしょうか。
原文(中国語)不好意思,今天开始腰有点疼。搬运重物的工作没问题吗?
教えてくれてありがとう。今日は軽い作業に変えるので無理しないでね。
(谢谢你告诉我。今天换成轻一点的工作,别勉强自己。)▲ KOETEのチャット画面の例。ちょっとした困りごとが、母国語のまま気軽に相談できる。
KOETEの機能のうち、この記事のテーマに直結するのは次の3つだ。
- AI翻訳(13言語対応):日々の指示・相談・雑談まで、母国語のまま「通じる」やり取りを支援する
- 改善提案・日報:現場からの気づきや頑張りを、○△×の簡単な入力とテンプレートで拾い上げ、「認められる」実感につなげる
- トラブル報告:発生→対応→解決の流れをスレッドで追跡でき、「相談できる」窓口として機能する
口頭でのやり取りと違い、KOETEは翻訳が自動で入り、話題ごとにスレッドで整理され、対応状況がリアルタイムで確認できる。日々の小さなやり取りが記録として積み上がっていく設計そのものが、「通じる・認められる・相談できる」を回すための土台になる。
まとめ ─ 賃金だけでなく、日々の「通じる」から見直す
外国人スタッフの離職は、賃金だけの問題として語られがちだが、実際には「指示が伝わらない→怒られてばかり→委縮する→相談できなくなる」という悪循環が根っこにあることが多い。定着している現場に共通するのは、「通じる」「認められる」「相談できる」の3つが日々の中で回っていることだ。
2027年施行予定の育成就労制度では本人意向による転籍が一定条件で認められ、「受け入れれば必ず残る」前提が崩れていく。制度対応と並行して、現場で選ばれ続けるための工夫に着手する価値は、これまで以上に大きくなっている。
よくある質問
外国人スタッフの離職を防ぐには、まず何を見直せばいいですか?
賃金や労働条件だけを見直すのではなく、まずは日々のコミュニケーションの実態を確認することをおすすめします。指示が本人に「通じて」いるか、日々の仕事ぶりを「認められて」いるか、困ったときに「相談できる」相手や仕組みがあるか。この3点のどこが欠けているかによって、優先して直すべき場所が変わります。
賃金を上げれば外国人スタッフの定着率は上がりますか?
賃金は定着に影響する要素の一つですが、それだけでは説明できないケースが多くあります。指示が伝わらず怒られてばかりで委縮してしまう、相談できる相手がいないまま孤立してしまう、といった日々のコミュニケーションの問題が根っこにある場合、賃金を上げても離職は止まりません。両方を切り離さずに見る必要があります。
育成就労制度で転籍が可能になると、定着はより難しくなりますか?
2027年施行予定の育成就労制度では、技能実習にはなかった「本人の意向による転籍」が一定条件のもとで認められる見込みです。転籍の要件や運用は今後の省令で確定していきますが、少なくとも「受け入れれば必ず残ってくれる」という前提が崩れる方向であるのは確かです。だからこそ、現場に選ばれ続ける工夫の重要性は増していきます。
KOETEは定着率の向上をどう支援しますか?
管理者が日本語で書くだけで、相手にはその人の母国語(13言語対応)で届くAI翻訳搭載のチャットです。指示や報告が母国語で通じる土台に加えて、日報や改善提案を通じて現場の声を拾い上げ、トラブル報告のやり取りが記録として残ります。「通じる・認められる・相談できる」を日々の運用の中で積み重ねやすくする仕組みです。
KOETEを導入すれば離職率は必ず下がりますか?
いいえ、数値の改善を保証するものではありません。定着は賃金・労働条件・人間関係・キャリア展望など複数の要因が絡む問題であり、KOETEはそのうちコミュニケーションの土台づくりを支援するツールです。導入すれば自動的に離職が減るというものではなく、現場の運用と組み合わせて初めて効果につながります。
KOETE