夜勤明けの申し送りノートに、こう書いた覚えがあるだろうか。

「〇〇様、今朝方ふらつきあり。歩行時は見守り強めでお願いします」。日勤に入ったスタッフに口頭でも一言添え、あとは紙のノートと個別のLINEに任せて退勤した。ところが午後、その利用者が一人で立ち上がろうとして転倒しかける場面があった。対応した外国人スタッフに聞くと、「ふらつきがあったことは知りませんでした」と困った顔をする。ノートは読んでいた。でも、専門用語混じりの日本語の意味を、自信を持って理解できていたわけではなかった。

どちらが悪いという話ではない。ただ、こうした場面が積み重なると、現場の空気は少しずつ悪くなる。日本人スタッフは「ちゃんと申し送りを見てほしい」と不安になり、外国人スタッフ本人は「見ていたのに、また注意された」と委縮してしまう。実はこれは、申し送りの内容が本人にとって"読めても分からない日本語"のまま渡っていることが原因であるケースが多い。母国語が違う相手に、専門用語混じりの日本語を一回読ませただけで正確に伝えようとすれば、日本人同士のチームでも似たようなすれ違いは起きる。誰が担当しても難しい構造なのだ。

この記事では、介護現場の申し送りでなぜ"伝え漏れ"が起きるのか、放置するとどうなるのか、そしてどう直していけばいいのかを、現場目線で整理する。

なぜ介護現場の申し送りは伝わりにくいのか?

申し送りが伝わらない背景には、主に3つの要因が重なっている。

01
専門用語の壁

「見守り」「傾眠」「バイタル」など、介護特有の言葉は学習中の日本語では読めても意味が取りにくい。

02
情報の分散

紙のノート・口頭・個別LINEに申し送りが散らばり、誰が何を見て何を見落としたか後から追えない。

03
確認の欠如

交代のあわただしさの中で「読んだ?」と聞いても、遠慮からとりあえず「はい」と答えてしまうことがある。

特に見落とされやすいのが3つ目だ。読んだから理解した、とは限らない。日本語がまだ得意でないスタッフほど、聞き返すこと自体に気後れしてしまい、分かったふりで交代時間を乗り切ってしまうことがある。これは本人の問題というより、忙しい交代の中で「もう一度説明して」と言い出しにくい構造の問題だ。

さらに、紙のノートと口頭と個別LINEに情報が分散していると、「渡したはず」の情報がどこにあるのか、後から誰も正確には追えなくなる。管理者側は申し送りを書いた・伝えた時点で仕事が終わったつもりになりがちだが、本人がどこまで理解し、どの情報を見落としたかは、実は確認されないまま次の勤務が始まっていく。

このまま放置すると何が起こる?

申し送りの伝え漏れは、単なる気まずさでは終わらない。積み重なると、利用者の安全と現場の信頼関係の両方に、実害の形で跳ね返ってくる。

  • ヒヤリハット・事故のリスク:転倒リスク・与薬の注意・アレルギーなど、安全に関わる情報が伝わっていなければ、対応の遅れや誤りにつながりやすくなる
  • 説明責任の空白:口頭や紙のみの申し送りは、誰が何を確認したかの記録が残りにくい。何かあったとき、「何をどう伝えていたか」を後から示す材料が手元にない
  • 対応のばらつき:夜勤から日勤への引き継ぎで抜け落ちた情報がある分だけ、利用者への対応が担当者によってばらつく
  • 信頼関係の摩耗:「ちゃんと見ていない」という誤解と「見ていたのに注意された」という委縮が積み重なり、本人のやる気や定着にも影響する

特に転倒・与薬・アレルギーなど、利用者の安全に直結する情報は、この構造の影響を最も受けやすい領域だ。"何が起きたか"は伝わっても"何に気をつけるべきか"という理由まで届いていないと、本人はその場をしのいでも同じヒヤリハットをまた繰り返してしまう。

そして積み重なった先に起こりやすいのが、職員の疲弊と離職だ。「申し送りを見ても意味が分からない」「見ていたのに注意される」という状態が続けば、外国人スタッフの負担は増していく。人手不足の中で採用した人材が早期に離れてしまう現場では、根っこをたどると申し送りの伝え方に行き着くケースが少なくない。

どう直すのか? ─「言った」から「伝わった」への切り替え

対策の考え方はシンプルだ。申し送りを、口頭・紙・個別LINEに分散した一回きりの伝達から、本人の母国語の文字として残し、読んで確認したところまでを記録する形に変える。

やることは大きく3つに整理できる。

  • 文字にする:口頭だけでなく、申し送りの内容を文字で残す
  • 母国語にする:専門用語混じりの日本語のままではなく、本人が読んで理解できる言語にする
  • 確認を記録する:本人が「読んだ・理解した」ことを、後から追える形で残す

この3つがそろって初めて、「申し送った」が「伝わった」に変わる。逆に言えば、どれか1つでも欠けると、また元の「伝えたつもり」に戻ってしまう。文字にしても日本語のままでは伝わらないし、母国語に訳しても紙に一度書くだけでは、誰がいつ確認したかが記録に残らない。

優先してこの形に切り替えたいのは、次のような利用者情報だ。

  • 転倒リスク・見守りの強さなど、安全に関わる注意事項
  • 与薬の時間・量・注意点
  • アレルギーや持病、食事形態の変更
  • その日固有の体調変化・気になる様子

すべての申し送りを一気に変える必要はない。まずは事故やヒヤリハットにつながりやすい項目から、優先順位をつけて始めるのが現実的だろう。

現場ではどう実現するか ─ KOETEという選択肢

とはいえ、「母国語で文字にして、確認まで記録する」を人力だけでやろうとすると、現実的な壁にぶつかる。介護記録ソフトの多くは日本語専用で、職員の多くはスタッフの母国語を話せないし書けない。かといって毎回通訳を挟めば、交代のあわただしい時間に間に合わない。

ここを埋めるのが、多国籍チームの報連相に特化したAI翻訳搭載チャットKOETEだ。仕組みはシンプルで、日本語で書くだけ、相手にはその人の母国語で届く。お互いが母国語のまま、その場でやり取りできる。原文(日本語)は常に併記され、やり取りはすべて記録として残る。

▲ KOETEのチャット画面の例。日本語で書いた"なぜ気をつけるべきか"が、相手には母国語で届く。

KOETEの機能のうち、この記事のテーマに直結するのは次の3つだ。

  • AI翻訳(13言語対応):ベトナム語・インドネシア語・タガログ語など、介護現場で多い言語も含めて自動翻訳。専門用語を毎回自分の言葉に置き換える手間をなくす
  • 利用者ごとのスレッド:申し送りを利用者単位でスレッド化し、夜勤→日勤→夜勤の引き継ぎを時系列で全員に共有
  • トラブル報告・改善提案:ヒヤリハットや気づきを、母国語で一言入れるだけの簡単なテンプレートで拾い上げる

紙のノートや個別LINEと違い、KOETEは翻訳が自動で入り、利用者ごとにスレッドで整理され、誰がいつ読んだかが記録として残る点が異なる。"伝え漏れ"を減らすための土台として、記録が自然に積み上がっていく設計になっている。

まとめ ─ まずは一歩目から

介護現場で外国人スタッフに申し送りが伝わらないのは、本人の日本語力の問題ではなく、専門用語・情報の分散・確認なしという伝え方の構造に原因があることが多い。この構造を放置すると、ヒヤリハットや事故のリスク、そして最終的には職員の疲弊や離職にまでつながりやすい。

直す一歩目は難しいことではない。申し送りを母国語の文字にして、読んで確認したところまで記録に残す。まずは転倒・与薬など、利用者の安全に直結する情報から始めてみるだけでも、"伝え漏れ"は着実に減っていく。

よくある質問

外国人介護スタッフへの申し送りが伝わらないのは、日本語力の問題ですか?

本人の日本語力だけが原因とは限りません。口頭のみ・一回きり・確認なしという申し送りの仕組みそのものに原因があることが多く、これは相手が誰であっても起こりうる問題です。忙しい交代時間の中で聞き返しにくく、分かったつもりのまま次の勤務に入ってしまうこともあります。

申し送りの伝え漏れを防ぐには、何から始めればいいですか?

すべての申し送りを一度に変える必要はありません。まずは転倒リスク・与薬・アレルギーなど、事故につながりやすい利用者情報から、本人の母国語の文字にして、読んで確認したところまで記録に残す形に切り替えるのが現実的です。

KOETEを使えば、介護記録や医療的な判断もAIに任せられますか?

いいえ。KOETEは申し送りやスタッフ間のやり取りを多言語でつなぎ、記録として残すためのチャットであり、介護記録の作成や利用者の状態に関する医療的・専門的な判断を行う機能ではありません。何を申し送るか、どう対応するかの判断は、これまでどおり現場の専門職の方が行ってください。

KOETEはこの問題にどう役立ちますか?

管理者やスタッフが日本語で書くだけで、相手にはその人の母国語で届くAI翻訳搭載のチャットです。原文の日本語も常に併記され、利用者ごとにスレッドを分けて申し送りを時系列で残せます。夜勤から日勤への引き継ぎも、誰が見ても後から追える形で記録されます。

導入にかかる時間や費用はどれくらいですか?

クレジットカード不要・10日間の無料トライアルから始められます。申込みの翌営業日から環境設定が可能です。料金プランは人数規模に応じて複数用意されています。

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