「前の担当者はこんなにやってくれたのに」――受け入れ企業からそう言われた経験がある登録支援機関の担当者は、少なくないはずだ。

技能実習生・特定技能人材の受け入れ企業を支援する登録支援機関。ある登録支援機関との商談で、担当業務やその難しさについて話を聞く中で、印象に残る話があった。この業界には、構造的に属人化しやすいという課題があるという話だ。

登録支援機関という仕事の構造

登録支援機関の基本的な役割は、特定技能人材の紹介から、来日後の日々の支援まで、企業と本人の間に立って伴走することだ。定期的な面談や連絡を通じて、通常通り問題なく働けているかを確認し、トラブルや不満があれば間に入って話を聞く。いわば、受け入れ企業と本人の両方を、継続的にケアし続ける仕事になる。

この「継続的に」という部分に、業界特有の構造がある。1人の担当者が、ある企業・ある人材を、年単位の長期間にわたって同じまま担当し続けることが珍しくない。短期のプロジェクトのようにメンバーが入れ替わる仕事ではなく、担当者と顧客企業・本人との関係が、そのまま何年も固定される働き方だ。

ある担当者自身の引き継ぎ体験

今回話を聞いた担当者自身にも、その実体験があった。前職では、4年以上にわたって、ほぼ変わらず同じ顧客企業を1人で担当し続けていたという。転職でその業務を離れる際、引き継ぎが非常に大変だったと振り返っていた。

「この人はこういう特徴があって、この会社さんはこうで、過去こういうことがあった」――そうした情報が、自分の頭の中にしかなく、うまく言語化・体系化できていなかった。

4年分の関係性、細かな経緯、企業ごとの事情。日々の業務の中で自然と積み上がっていったそれらの情報は、退職というタイミングになって初めて、「誰かに渡さなければならないもの」として意識される。だが、最初から記録として残す仕組みがなければ、直前になって慌てて言語化しようとしても、記憶に頼る以上どうしても抜け落ちが出る。

属人化が起きる理由

この担当者によれば、業界内では、団体によって1人の担当者が顧客を抱えすぎてしまう状況がよく起きているという。そして、その担当者が業務過多で「パンク」してしまったとき、過去の情報をキャッチアップできる人が誰もいない、という事態に陥りやすい。

  • 1人の担当者に、担当企業・担当人材の情報が集中する
  • その情報は、日々のやり取りの中で頭の中に蓄積されるだけで、記録として残らない
  • 担当者が抱えすぎて倒れたとき、代わりに対応できる人がいない
  • 担当者が退職・異動するとき、引き継ぎに多大な労力がかかる

いずれも、担当者個人の能力や努力の問題というより、情報が個人の頭の中にしか存在しないという構造そのものに原因がある。誰が担当しても、同じことは起こりうる。

担当者交代は、顧客が離れるかどうかのターニングポイント

この構造が実害として表れる場面の一つが、担当者交代のタイミングだ。担当者によれば、担当が変わった瞬間は、顧客企業が離れるか離れないかの大きなターニングポイントになるという。「前の担当者はこんなにやってくれたのに」という不満が出やすいのが、まさにこの瞬間だ。

受け入れ企業の側からすれば、これまで積み重ねてきた関係性やちょっとした配慮が、担当者が変わった途端にリセットされたように感じられる。実際には新しい担当者が同じだけの配慮をしようとしていても、過去の経緯を把握できていなければ、同じ対応はできない。結果として、サービスの質が落ちたと受け止められてしまう。

情報が記録されていることの価値

逆に、日々のやり取りがきちんと記録・蓄積されていれば、状況は変わる。担当者が急に休んだり、あるいは出張や移動中で連絡が取れない状況にあっても、過去のやり取りをすぐに引き出して、代わりの人がその場で対応できる

今回の商談では、この「過去のやり取りをすぐに引き出す」という部分について、開発者である宮崎からもアイデアが出た。日々のやり取りをAIが要約し、定期的な報告書のような形にまとめられるのではないか、というものだ。宮崎自身、KOETEの開発・運営において、AIによる要約を裏側で活用している取り組みがあり、その延長線上の話として出てきたアイデアだった。

▲ KOETEのAIエージェント機能の例(イメージ)。日々のやり取りが記録として残っていることが前提。「定期的な報告書の形にまとめる」というのは、この商談の中で出たアイデアであり、現状の機能そのものではない。

この話を聞いた担当者は、強く反応した。

「個人的にめちゃくちゃ付加価値を感じています」

前職での引き継ぎの苦労を実体験として知っているからこそ、この価値がリアルに響いたのだろう。情報が記録として残っていれば、担当者個人の頭の中に依存せずに済む。それは、担当者自身の負担を減らすと同時に、顧客企業から見た「担当者が変わっても、ちゃんと引き継がれている」という安心感にもつながる。

KOETEという選択肢

今回の商談は、この登録支援機関自身がKOETEの導入を検討する中で出てきた話だった。KOETEは、多国籍チームの報連相に特化したAI翻訳搭載チャットとして開発されたものだが、その中心にあるのは「やり取りを記録として残す」という仕組みそのものだ。管理者は日本語で書くだけ、相手にはその人の母国語で届く。原文と翻訳はどちらも残り、後から検索・参照できる。

今回のテーマに直結するのは、次の機能だ。

  • やり取りの記録:誰が・いつ・何を伝えたか、何を相談したかが、担当者個人の記憶ではなく記録として残る
  • 改善提案・トラブル報告:現場からの気づきや懸念をテンプレートで拾い上げ、対応状況とあわせて記録する
  • AIエージェント(要約・気づき抽出):蓄積された記録を、日本語で「教えて」と聞くだけでAIが要約して返す

属人化そのものをゼロにする魔法はない。だが、担当者の頭の中にしかなかった情報を記録として残す仕組みがあれば、担当者が変わる瞬間の衝撃を小さくすることはできる。それは、顧客企業の安心感につながるだけでなく、担当者自身が抱え込みすぎずに働ける環境にもつながるはずだ。

なお、KOETEはSaaS(クラウドサービス)として提供しており、現場ごとの個別カスタム開発は行っていない。既存の機能とテンプレートの範囲で、どの現場でも使える形になっている。また翻訳はあくまで日常の業務コミュニケーションを支援するものであり、契約書などの法的文書への利用は推奨していない。

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